第8回 沖縄県こども環境会議
1 概 要
⑴ 名 称:第8回沖縄県こども環境会議
⑵ 参加団体:名蔵小中学校、久米島ホタル館(久米島ホタレンジャー)、大宜味(やんばる舎ジュニアクラブ)、漫湖水鳥・湿地センターこどもエコクラブ
⑶ 期 日:2018年7月27日(金)
⑷ 開 催 地:漫湖(那覇市・豊見城市)
⑸ 会 場:漫湖水鳥・湿地センター(豊見城市) TEL:098-840-5121
⑹ 主 催:漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会
(環境省那覇自然環境事務所、沖縄県、那覇市、豊見城市)
⑺ 後 援:沖縄県教育委員会、那覇市教育委員会、豊見城市教育委員会、
石垣市教育委員会、宮古島市教育委員会、久米島町教育委員会、大宜味村教育委員会
⑻ 協 賛:オキコパン(株)、沖縄コカ・コーラボトリング(株)、沖縄森永乳業(株) 、
ライオン菓子(株)
2 会議の実施状況
例年台風接近等、天候を気にしながらの開催が多かったが、今年度は天候にも恵まれ会議を迎えることができた。第8回会議では、4団体での交流・意見交換となった。
今回は、昨年に続き県内の団体のみでなく、Skypeを通して国外の団体(台湾)との交流を行うとともに、離島からの前泊団体を対象に施設案内やマングローブ林散策など新たな取組を実施することにした。また、これまでの関係湿地間のみの取組を見直し、近隣の学校や地域で環境問題などに取り組む団体等へも各湿地の活動発表への参加を呼びかけ、自然環境保護や湿地保全意識の高揚に努めた。会議に先立ち担当者やコーディネーターと調整し、「交流」(仲良くなろう)、「学習」(お互いから学ぼう)、「実践」(行動に移そう)をキーワードに会議内容を構成することとした。具体的には、各湿地の過去と現在の航空写真を比較して相違点に気づき、未来の湿地の在り方について自由な発想を出し合い、「湿地の望ましい未来図」を考えた。
今回の会議においても、「交流」を通して湿地保全や自然環境保護活動の新たな展開に向けて意見を交換し、「未来に向けてこれから私ができること」を考え、グループ内で話し合い、最後に大会宣言文としてまとめ発表した。
こども環境会議 |
⑴ 受付・オリエンテーション 【日程説明、諸注意、連絡事項】 長嶺 将範(センター職員)
午前8時に漫湖水鳥・湿地センターに集合し、受付を行い、会議会場のレクチャールームへ移動した。
オリエンテーションでは、4団体と一般参加者の紹介を行い、その日の主な流れについて説明し会議のスタートをきった。
全員で会議の目的を確認し、3つのキーワード①「交流」(うんと仲良くなろう)、②「学習」(お互いの良いところを真似よう)、③「実践」(各湿地に帰ったら行動に移そう)をもとに自分から積極的にかかわることを確認した。また、熱中症対策のため小まめに水分をとることや、フィールドに出る際には帽子を着用するなど安全面への注意を促して第8回会議を進めた。
⑵ 開会あいさつ
漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会
会長 宜保 晴毅 氏(豊見城市長)
漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会の宜保晴毅会長からは、湿地を取り巻く自然環境に対する様々な取組をみんなでともに考え情報交換や意見交換を行うことにより、今後の活動及び自然環境保全に一層役立てるよう歓迎と激励のあいさつがあった。
⑶ 湿地の活動紹介
【コーディネーター】仲村渠 浩美 氏(あーまんシアター)
8:30からは、仲村渠氏をコーディネーターとして、各湿地の発表を行い全体で振り返り、質問・応答などを行った。湿地の発表は以下の順で行った。
・漫湖水鳥・湿地センターこどもエコクラブ ・大宜味(やんばる舎)
・久米島ホタレンジャー ・名蔵小中学校
4カ所の湿地の活動紹介の後、仲村渠氏のコーディネートで質問や意見、感想などを述べ合った。
◇…コーディネーター、参加者
○…各団体の発表者
【漫湖水鳥・湿地センターこどもエコクラブ概要】
活動場所である漫湖について、湿地の環境やそこで見られるカニや水鳥などをクイズ形式で紹介した。後半には、去年の会議で決まったテーマ「私たちは、生き物のために進んでゴミ拾いをして環境を守っていきたい」をもとに毎月2回の活動内容(野鳥観察、水質調査、月桃プロジェクトなど)を紹介した。最後に、これからも生き物が気持ちよく住める環境のために活動することを誓い発表をしめくくった。
◇ゴミ拾いをして一番びっくりしたゴミは?
○冷蔵庫。上流から流れてきたと思う。自転車。死んだ亀の甲ら。フライパン。ボーリングのボ ール。車のタイヤ。
◇やった人でしかわからない大事なことだ。お友達や家族にも話してみるといいかもね。どうしてボーリングのボールや冷蔵庫などがゴミとしてあるのでしょうね。
【大宜味やんばる舎ジュニアクラブ概要】
「地域の自然を発見」~屋古集落をチョウの舞う里に~のテーマで屋古集落を7つの区域ごと4年間にわたるチョウの種類・個体数についての調査結果を発表した。4年間で5科52種を確認できたことを自分たちで撮影したチョウの写真とともに紹介し、やんばるを訪問した海外の研究者とも交流し高い評価を受けたことを報告した。最後に今後の課題をあげ、観察の継続を誓った。①観察力を更にアップすること。②「自然見守り隊」の仲間を増やし観察を継続すること。③国立公園の塩屋湾を「チョウの住む里」にすること。
◇地域の方と一緒にどのような活動をしている?
○チョウの食草や花を一緒に植樹したりしている。
◇そのような取り組みもあり、チョウが増えたのかも知れない。地球の環境にも役立つ活動ができることがすごい。
【久米島ホタレンジャー概要】
島の宝であるクメジマボタルとキクザトサワヘビを中心に久米島ラムサール登録湿地の自然を紹介した。サワヘビの大好物や天敵などをクイズ形式でわかりやすく紹介し、多様な生き物たちが生息していることや、そこで営まれている食物連鎖についても図解入りで説明した。地域の老人会や館長、ホタル館の先輩から、自然を豊かにするためには平和な暮らしが大事で、自然の生き物たちの繋がりが島で住む人々の暮らしを支えてきたことなどを学んだことが紹介された。生き物が住みやすい環境づくりのためのビオトープづくりやキャンプ、ホタル祭りなど楽しく活動している様子も紹介された。
◇ホタル感謝祭とはどのようなことをする?
○みんなでホタルを見に行く。明日は、キャンプがありみんなで虫を食べる。
◇地域の人から昔のことを教えてもらうとあったけど、昔と今で関係あるのは何?
○昔は海の近くに田んぼがあったけど今はない。都市化が進み今では田んぼが一部残るだけ。
◇食物連鎖の絵を見ると、カワニナをホタルの幼虫が食べて、ホタルの幼虫をクメジマオオサワガニが食べ、それをキクザトサワヘビが食べ、それをオオウナギが食べることをみなさんは知っていた。地域の人も一緒に、長年活動を続けた結果、生き物たちが増えてきたことはすばらしい楽しい。
◇キクザトサワヘビは見たことがあるか。
○見たことはない。(一代前のホタレンジャーは見ている:佐藤館長)
◇そのうち見られるといいね。
【名蔵小中学校概要】
川平湾や於茂登岳など豊かな石垣島の自然紹介に始まり、名蔵アンパルと名蔵小中学校の取組について紹介した。名蔵アンパルではヤエヤマヒルギやオヒルギ、ヒルギモドキなどのマングローブがあり、クロツラヘラサギやセイタカシギなどの水鳥やキバウミニナやシレナシジミなどの貝類、シオマネキやオキナワアナジャコなどの甲殻類が見られる。学校の取組としては、アンパル探検(体験学習を目的とした観察・調査活動)とアンパル保全活動(年に1回の清掃活動)を中心とした活動を行っている。中学校では①カニ探検で民謡『アンパルヌミダガーマユンタ』に登場するカニ全てを探し、②カニ行動調査でシオマネキ、チゴガニ、ミナミコメツキガニを調べた。民謡に出てくるカニは15種中6種まで確認できた。行動調査では、オキナワハクセンシオマネキは特定の巣を持たず、巣の取り合いをしていること、チゴガニは求愛行動や威嚇のためのダンスをすること、ミナミコメツキガニは砂にもぐるのに右回り左回り同数だったことがわかった。また、個体によっても右に回ったり、左に回ったりがあった。今後は、アンパルの清掃活動とアンパルに生息するカニ以外の動植物についての調査を行っていく。
◇カニについて細かく調査している。民謡に出てくるカニに興味を持ち、それらの行動を調べるところがすごい。
◇名蔵アンパルのマングローブは植えたものか?自然に生えたものか?
○人工的に植えた話は聞いたことないので、自然に増えたのだと思う。
◇調査の時間は授業の中で行うのか?
○総合的な学習の時間で小学校と中学校が別々の課題に取り組んでいて、発表の場もある。
◇生き物のことを知れば知るほど、大切にしたいという気持ちも自然にわいてくるのでしょうね。
◇調査で見られた民謡の歌詞とよく合っているカニは?
○シオマネキが一番合っていると思う。大きい手を振っている様子が三線を弾いているようである。
◇地質に関連して、三百年前八重山では津波があったが、その痕跡のようなものは見つけられたか?
○大浜にあるが、アンパルでそのような跡はない。
⑷ ワークショップ1 フィールドワーク 【コーディネーター】仲村渠 浩美 氏
各グループで与えられた「空」「山」「海」「川」のテーマでチーム名を付けた(空:スカイ、山:山ブラザーズ、海:めーぬうみ、川:シオマネキ 子どもチーム3つ、大人チーム1つ)。各グループに4か所の湿地(漫湖、久米島、大宜味、名蔵)の過去と現在の航空写真を貼った模造紙を配布する。1か所あたり5分間で過去と現在の湿地の相違点を見つけ、模造紙に記録する。一つの湿地が終わったら次の湿地に移り、4か所全てを観察することでたくさんの気づきが記録される。
後半では、過去・現在の気づきからみんなで湿地の望ましい未来を模造紙に絵にする。
作業の途中で、実際の環境の変化を体感するため、センター職員(池村)が木道を案内した。湿地の過去・現在、そして望ましい未来図の在り方を考える上で、実際に漫湖では環境がどう変化してきたかを干潟を観察しながら説明。視点は、生き物ではなく生き物が暮らしている環境に目を向け、人の活動により変化したものを探しだし、その変化はどうして起こったか?その背景なども想像をふくらませて考えた。
⑸ 昼 食
ワークショップ1終了後は、カレーと鶏のから揚げを漫湖水鳥・湿地センター玄関前のパーゴラ下で食べた。食器はエコマール那覇からリユース食器を借用した。漫湖水鳥・湿地センターボランティアの協
力により片づけもスムーズに行われた。残飯の出ない、エコで楽しい昼食会となった。
⑹ 国外団体との交流(Skype) 【コーディネーター】 富田 宏(センター職員)
交流団体:關渡自然公園(台湾)
第8回会議では、台湾で同様に湿地保全等に関わる活動をしている団体「關渡自然公園」との交流に取り組むことにした。富田センター職員のコーディネートにより台湾からは湿地の保全や渡り鳥の保護活動に関わる紹介があり、沖縄からは名蔵小中学校が名蔵アンパル保全活動、カニ調査について紹介した。台湾「關渡自然公園」の発表では過去と現在の写真を比較しながら、自然公園の環境が変化し、渡り鳥の数が減少したと説明があった。特にマングローブの広がりにより干潟が減少し、コガモが急激に減少しているグラフに驚いた。鳥の数の減少要因としては、他に太陽光パネルの設置や干潟の陸地化、畑への転用などがあり、沖縄とも似たような課題を抱えていることを学んだ。
⑺ ワークショップ2 【コーディネーター】 仲村渠 浩美 氏
「未来の湿地はどんな場所?」をテーマに各グループで話し合い、以下のように湿地の望ましい未来図を完成させた。その後、グループごとに発表した。
完成した未来図の中で、大事だと思う箇所を拾い出し、その未来図に近づくために今後何をしたらよいか個人個人の言葉で表現した。それをもとに「未来に向けてこれから私にできること」を各自が宣言カードに記入してグループで共有し、大事な点をまとめた。グループごとの言葉を板書し、みんなでそれを集約し第8回沖縄県こども環境会議の宣言文を完成させ、全員で声高らかに読み上げ各湿地での次の実践を誓った。
第8回沖縄県こども環境会議 宣言文
○排気ガスを出さない。 ○ないものを増やすより、自然を守ったほうがよい。 ○人間と生き物が共に楽しく生きていける世界をつくる。 ○湿地の事をみんなに教えて関心をもつようにしたい。 ○ゴミを野外に捨てずに拾う。 |
⑻ 講評 【環境省那覇自然環境事務所】 所長 東岡 礼治 氏
こども会議終了後、漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会事務局の環境省那覇自然館環境事務所東岡礼治所長より、講評をいただいた。講評の中では、皆さんの活動は各湿地はもちろん、周囲の大人や研究者へさまざまな影響を与える可能性があること、今後、宣言文を友だちや周りの大人にぜひ伝えて、皆さんが思い描く世の中になれるようにとの激励のお言葉があった。
(9) 閉会のあいさつ 【漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会】 副会長 城間 幹子 氏
(那覇市長代理 玉寄 隆雄 部長)
漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会副会長代の那覇市環境部玉寄隆雄部長からは、今回、まとめあげられた宣言文を見ると、那覇市環境部の施策とも共通する部分が多く、みなさんが環境のことを真剣に考えていることに改めて感心した。今後、それぞれの湿地で活動の輪を広げ仲間を増やし、みんなで地域の環境保全に取り組んでいくことを誓い会議を締めくくった。
(10) 解散
最後に来年の第9回会議での再会を祈念して、記念撮影の後、協賛企業からの協賛品をもらい16時過ぎに解散した。
3 沖縄県こども環境会議の開催状況と成果について
沖縄県こども環境会議は、「国連国際生物多様性年」の平成22年に第1回会議が豊見城市の漫湖水鳥・湿地センターで開催された。その後、航空運賃等の高騰により一度中止(平成27年度)されたが、今年は第8回会議を無事開催することができた。
毎年台風の襲来に悩まされる沖縄においては、夏季の諸行事は台風の発生・進路を気にしながらの準備となるが、昨年度に引き続き今年度も台風の心配がない状況で開催することができた。
今年度は、県内5カ所の活動団体へ参加を呼びかけるも最終的に4団体の参加となった。今回の会議では、これまでとは趣向を変え会議を1日にまとめた。これまでの関係湿地間のみの活動を見直し、近隣の学校や地域で環境問題などに取り組む団体等へも参加を呼びかけるなど、より良いものとなるよう新たな取組を行った。
⑴本会議の成果としては、
・名蔵アンパルの保全活動に取り組んでいる名蔵小中学校を加え、4団体で開催できたこと
・新しい引率者も含め今後の連携強化が図られたこと
・県内各地の湿地で活動を続ける仲間の輪が広がったこと
・他団体の活動を知ることでお互いに刺激を受け、新たな意欲に繋がったこと
・国外の活動団体の様子を知り交流ができたこと
・会議に参加した子どもたちの成長に繋がったこと
・ラムサール条約の普及啓発に寄与できたこと
・若狭児童館で海岸清掃等に取り組む地球ハートクラブや近隣の学校から7人が一般参加者として加 わり、県内の自然環境保護や湿地保全意識の高揚につなげることができたこと
・当センター施設紹介やマングローブ林探検を実施できたこと
等があげられる。
以上のことや参加者のアンケート結果などから、本会議の目的である
・県内各湿地で自然環境保護活動を行っている団体の連携と子どもたちの交流
・今後の自然環境保護や湿地の保全活動の新たな展開に向けての意見交換
・県内各湿地の活動発表を多くの子どもたちと共有する
を実現できたと考える。
今後は、新たな参加団体の発掘等に努め参加者の増加につなげる必要がある。また、一般参加者の参加の仕方を更に工夫する必要がある。
⑵その他
本会議の参加者(子どもたち、引率者)に対してアンケート調査を実施し、本会議についての感想・意見と次回開催についての意向を把握した。