「生態系サービス」って何?

「生態系」は壮大で多様で、驚きと発見に溢れた物語
大地にふった雨は、川を流れ海へたどりつき、そして太陽に温められ、やがて、また雲となり雨をふらす。そして大地に生える草木は、その雨の水と土の中の栄養を材料にし、太陽の光を借りて光合成をする。こうして、草木はすべての生き物が生きていくために必要な酸素をつくりだす。その豊かな自然の中で生きるすべての生き物は、自分以外の生き物の命をいただいて暮らしている。そして、すべての生き物が命をまっとうし、死を迎えた時、小さな小さな生き物の力を借りて、大地の栄養分と姿を変える。

このような、自然界で生息する様々な生き物とその集まり、そして、その生き物たちを取り巻く環境をひとつのまとまりとして捉えたものを「生態系」といいます。

「生態系サービス」は、見えないつながりを見える化して考える!?
私たち人間も、「生態系」の大切なメンバーです。ですが、呼吸をする時に「酸素を吸っている」ことを意識しないのと同じで、現代の暮らしは生きていくために必要なものすべてが当たり前になりすぎて(その有難さが見えにくくなっていて)、普段は意識することがありません。でも、その「無意識」のせいで、人間の暮らしが、一部便利で豊かになる一方で、本来の豊な生態系が、地球上のあちこちで失われる危機に直面しています。知らない間に、すでに消えてしまった生態系もあるかもしれません。このような、自然の恵みや生物同士の見えないつながりの豊かさや大切さを見える化し、失われゆく生態系の回復や、残された自然の保全と、無理のない活かし方について、一人一人が考え、行動するきっかけを与えようとする試みが「生態系サービス」とう考え方です。

「生態系サービス」は、次の4つに分けられています。

①基盤サービス
植物が行う光合成をはじめ、水の循環や生き物同士の食べる・食べられるのつながりを介して受け渡されるエネルギーや、炭素や窒素といった物質の循環など、人間を含むすべての生き物が暮らしていくために必要不可欠な基礎となる恵みのこと。

②資源供給サービス
お米や野菜、お肉や魚介類といった食料をはじめ、飲み水となる淡水、住むための場所を作るために必要な木材や石材、温度調節に欠かせない衣服の材料となる繊維など、人間の「衣・食・住」に欠かせない資源を供給する恵みのこと。

③調整サービス
人間が安全に快適に暮らすために、気候を調整したり、水や空気を浄化するといった、豊かな生態系が維持されているおかげで成り立っている調整システムのこと。一番目に見えにくいけど、そのおかげで自然災害や感染症といった疾病のコントロールの役割も担うとても大切な恵みのこと。

④文化的サービス
豊かな生態系があるおかげで、登山やキャンプ、ダイビングやバードウォッチングなどの体験を通して、人間が心理的に得られる癒しや、絵を描いたり、音を奏でたりといった創作・表現活動のひらめきを与えてくれる感動といった、文化的価値の源となる恵みのこと。